2018.10.02
企業法関連
反社会的勢力との契約解消-反社該当性の立証方法等-
第1 事前に反社会的勢力を排除する局面(平素よりの対応)
反社会的勢力との関係を持ってしまうと、関係遮断に労力、費用、時間がかかってしまい、職員の負担も大きい。
そこで、反社会的勢力との関係を持たないように、平素から対応を行うことが重要である。そのためには、組織として、暴排の意識を高めて行くことが必要となる。
契約自由の原則が大前提としてあるので、反社会的勢力該当性の判断を迅速に行い、契約締結前に関係を遮断することが、最も効果的な反社会的勢力に対する対策となる。
1 政府指針
取締役は、内部統制システムを構築し、それを機能させる義務を負う(会社法348条3項4号)。
反社会的勢力による被害の防止は、業務の適正を確保するために必要な法令等遵守・リスク管理事項として、内部統制システムに明確に位置づけることができる。
反社会的勢力に対する対応は、法令遵守に関する重大な問題と捉える必要があり、組織としての対応が必須である。
また、反社会勢力への対応を行う職員を孤立させないためにも、組織としての対応が不可欠である。たとえば、反社会的勢力との関係を有してしまった職員が反社会的勢力からの不当要求と社内的な非難との板挟みになるようなこととなってはならない。
2 基本方針の社内外への宣言
職員の孤立を防ぐ。反社会的勢力からの接触を予防する。
(基本方針)
○反社会的勢力による不当要求に対応する従業員の安全を確保 する。
○反社会的勢力による不当要求に備え、専門機関と緊密な連携関係を構築する。
○反社会的勢力とは、取引関係も含め、一切関係を持たない。
○反社会的勢力による不当要求に対しては、民事と刑事の両面から法的対応を行う。
○反社会的勢力による不当要求が、事業活動上の不祥事や従業員の不祥事を理由とする場合であっても、事案を隠ぺいするための裏取引を絶対に行わない。
○反社会的勢力への資金提供は、絶対に行わない。
3 データベース構築
公的データベースと自社データベースの双方を活用することが効果的である。業界内の生の情報は、公的データベースからは取得し難いからである。
データベースとなると構築資金の問題があるが、エクセルの自社データベースを活用する中小企業もある。同データベースにおいては、関係業界の許認可の取消処分の情報や商談における具体的交渉態度(睨み付けた。威圧した等)、従業員が聞きつけた業界の風評といった生の情報が集約されている。
4 契約条項への暴排条項導入の徹底
第2 関係遮断の局面
反社会的勢力と関係を有するに至った場合は、関係遮断をはかることとなる。
そのためには、相手方が反社会的勢力であることの立証が重要となる。
1 自力で収集する。
弁護士が依頼者から詳細な聞き取りをする。
現場担当者の観察力や勘は意外と鋭く、反社該当性を補完し、今後の調査の手掛かりとなる場合がある。
また、相手方が離脱や破門等の主張をしてくることもあり、警察への照会に対する回答のみでは、裁判上、反社該当性を否定される虞がある。
さらに、密接関係者については、警察への照会について、あまり期待できない。
2 暴力追放運動推進センター
各都道府県の暴追センターは、新聞に暴力団に関する記事(検挙情報等)が掲載された場合は、全国暴力追放運動推進センターに情報共有し、同センターにおいて全国の情報を保有している。
暴追センター職員と面談し、利用目的を説明し、目的外利用しないことを誓約する書面を提出すれば、口頭で情報を教えてもらえる。
3 警察
平成25年12月19日に最新の情報提供通達が発せられている。
4 刑事事件記録の謄写
(1)犯罪被害者保護法3条又は4条
(被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)
第三条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。 (同種余罪の被害者等による公判記録の閲覧及び謄写) 第四条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、次に掲げる者から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、第一号又は第二号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。 一 被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者 二 前号に掲げる者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹 三 第一号に掲げる者の法定代理人 四 前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士 2 前項の申出は、検察官を経由してしなければならない。この場合においては、その申出をする者は、同項各号のいずれかに該当する者であることを疎明する資料を提出しなければならない。 |
(2)刑事訴訟法53条、刑事確定訴訟記録法4条